2012年11月7日水曜日

第三極結集という烏滸



 最近、いわゆる第三極の政党間の連携が話題を呼んでいる。先日は、石原氏とたちあがれ日本、日本維新の会との会談があった。しかし、実際には政策の違いなどから、第三極結集というのは難しそうだ。

 いや、私にしてみれば、第三極結集などというのは噴飯物以外の何ものでもない。さきほども述べたように、消費税や原発、TPPなどに対する各党の考え方は異なっている。選挙のために小異を捨てて大同についたところで、その後の展望はあるのだろうか。

 思い出してほしい。考え方のバラバラな人間が選挙のために野合した例が過去にもある。民主党である。民主党は非自民という一点のみで結束を保っていた。その結果はどうだったか。口にするのも憚られるほどの愚劣さであった。

 今、「既成政党打破」だか「官僚支配の打破」だかは知らないが、そうしたスローガンのもとで同じことが繰り返されようとしている。

 もはや、わけのわからない烏合の衆が国政において闊歩することに、国民は飽き飽きしているのではなかろうか。だいたい、既成政党の打破とか言っておきながら、第三極の政党の議員はほとんど“既成政党”出身の先生たちばかである。今求められているのは、第三極とか非既成政党という陳腐な真新しさではなく、確かなビジョンを共有できる政党であろう。

 であるからして、石原氏がなぜ熱心に日本維新の会などに秋波を送るのか、理解できない。おそらく、いくら立派なビジョンがあっても、実際に政権を獲れなければ意味がない、したがって今は数を揃えることが重要だというふうに考えているのだろう。しかし、問題は政権を獲った後なのである。民主党とて、政策の違いから離党者が続出し瓦解しつつある。仮にみんなの党、日本維新の会、たちあがれ日本+石原氏からなる連立政権が発足したとしても、それが長く続かないことは火を見るよりも明らかだ。

 そして、石原氏の支持基盤であると思われる保守層をげんなりさせているのは、石原氏が日本維新の会などというとんでもない政党と組もうとしていることである。

 以下は、114日付け産経新聞の記事からの引用である。


石原氏「大変良好!」

 たちあがれ日本・平沼赳夫代表「(進展があったかを)話す必要はないよ…」

 古くからの同志が語った会談後の感想は対照的だった。帰りのJR京都駅でも、苦虫をかみつぶしたような表情の平沼氏に、石原氏が「生みの苦しみだなあ」と漏らした。
会談では、石原氏が「中央集権の支配から変えるのはこの機会しかない」と「官僚支配打倒」による大同団結を呼びかけた。
橋下氏は、この場でもたちあがれ批判を展開した。

 「『真正保守』とか言っているメンバーとは組めない!」

 「大変失礼だが、石原御大もたちあがれとはカラーが違うじゃないですか?」

 「真正保守」について、平沼氏が「日本の伝統・文化を守りたいという意味で言っているのだ」と説明しても、橋下氏は「政策の決定基準にするのは違う。もっと合理的に決めなきゃ」と攻撃を緩めなかった。
同席者の一人は「平沼氏が怒ると思ったが、黙って聞いていた」という。
 たちあがれ内には、橋下氏について「政策が違う」「本当の保守なのか」との異論があったのは事実だ。しかし、たちあがれは「石原新党」への合流を機関決定した。石原氏が突き進む橋下氏らとの連携を拒否する選択肢はもはやない。


(引用終わり)

 橋下氏側は、「『真正保守』とか言っているメンバーとは組めない」と明言したのである。改めて、橋下氏が保守ではないということが明らかになった。

 話は逸れるが、私は、いち地方公共団体の長としての橋下氏とその政策には共鳴するところもあるのだが、国政政党である日本維新の会とその代表であるところの同氏には全く賛同できない。理由は、政策的なところもある―脱原発などというバカげた政策を臆面もなく披歴するなど―のだが、何よりも大きいのは、維新の会が本当に国政政党としてふさわしいのか疑問だからだ。

 保守主義の父エドモンド・バークは、1774年のブリストル演説において、政治家の「国民代表の原理」を表明した。それは、政治家というのはその選挙区の人々の声を政治に反映するのではなく、国民の代表として国家全体の利益のために奉仕するのだということである。これを敷衍するに、政党にも同様のことが言える。
 
 しかしながら、日本維新の会はどうだろうか。私には、この政党が日本国よりも大阪を優先して物事を進めているように思えてならない。いうまでもなく日本維新の会とは大阪維新の会を中心とした政党なのだが、大阪維新の会がその他勢力と連合し日本維新の会として国政に進出するに至った経緯を思い出してほしい。それは、大阪都構想を実現するために国の法律・制度を変えることが原点にあった。その政策にしても、大阪のような大都市を念頭に置いているという側面が強い。

 また、代表である橋下氏自身が未だに大阪市長を続けているというのもおかしな話である。自らが国政政党の舵をとろうとするのであれば、石原氏のように辞職するのが筋だろう。二足のわらじ状態を続ける同氏の姿勢は、国民を愚弄しているように思われる。

 以上のような理由から、私は日本維新の会を支持することはできない。第三極結集というのも烏滸の沙汰だというのに、その上、日本維新の会と組もうなど、空いた口がふさがらない。自民党の方がまだ政策的にも近い。石原氏に本当に政権を獲る気があるのであれば、悪いことは言わない、自民党と組むのが現実的だろう。

(坂木)