2013年3月21日木曜日

小選挙区はそんなに悪い制度なのか?

2005年の郵政解散で自民党296議席、2009年の政権交代で民主党308議席、2012年の政権奪還で自民党294議席…、近年続く振り子のような選挙結果に対して、不満を抱いている人は少なくない。ネット上では小選挙区擁護派は圧倒的に少なく、一方で小選挙区否定派(中選挙区派:右派に多い、比例代表派:左派に多い)は圧倒的に多い。

一般的に言われる各選挙制度のメリット・デメリットは以下のとおりである。

①小選挙区
メリット:二大政党制に近づくことで政治が安定する、政権交代が生じやすい
デメリット:死票が多い、多様な民意が反映されにくい

②中選挙区制
メリット:死票を減らすことができ、人物本位で投票できる
デメリット:同一政党での候補乱立等、金権政治を招きやすい

③比例代表制
メリット:民意を比較的正確に反映する
デメリット:政党本位となり、人物判断ができない

ここで問題提起したい。そもそも民意を正確に反映することは、民主主義を運営するうえで正しいことなのだろうか?

比例代表制では有権者は自らの意見にあった政党に投票する。つまりベストを選ぶ選挙制度である。ここで、比例代表制で政治の構造がどうなるか考えてみたい。与党にならなければ政策は実現できないので、政治にはある一定の求心力が働く。しかしながらこの求心力には限界がある。なぜか。比例代表制では中道的な政策を掲げることはそれほどメリットではない。むしろ自党を支持する固定層の有権者にアピールできる政策を採択した方が効率よく議席を確保できる。よって政権に参加しても常に選挙を意識し、固定層にアピールした政策を採用する圧力をかけ続けることが少数政党にとっての最適解となる。

小選挙区制では有権者は場合によって戦略投票を余儀なくされる。例えば社民党や共産党を支持する層は自民党の候補者だけは当選してほしくないと考えるから次点の民主党候補に入れたいと考えるかもしれない。あるいは維新やみんなを支持する人間が民主党候補の当選は避けたいと考え、自民党候補に入れる場合もあり得るだろう。つまり小選挙区はワーストを選ばない選挙制度とも言い換えることができる。よって各政党は毒にならない中道的な政策を掲げることが正解となり、政治は相対的に安定する。また急進的な勢力の拡大を阻止することも容易である。

もしベストを選ぶことこそ民主主義ととらえるならば、比例代表しか選択肢はない。しかしワーストを選ばないことが民主主義ととらえるならば比例代表は最悪の選択である。急進派が大きな議席を得るリスクを常に抱えるからである。

私はワーストを選ばないことこそ民主主義に求められた最大の役割だと思う。だから強調したい。小選挙区ほど急進派を排除できる制度はないと。ではまた別の機会に小選挙区の骨格・理念を維持しながら、多様な民意を反映しやすい制度を模索してみたいと思う。

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