2011年9月1日木曜日

野田総理就任を歓迎する。

同じブログの執筆者が3人ということで、別の見解を乗せておこうと思う。とはいえ大筋では同感ではあるのだが…。

私は一貫して菅前首相の早期退陣を主張してきた。当初、菅前内閣は、鳩山政権が軽視ないし無視してきた日本の抱える様々な政策課題(①税と社会保障の一体改革、②TPPをはじめとするEPA,FTA戦略、③法人税減税など成長戦略、④無理なマニフェスト修正)の見直しを掲げ、誕生した政権であった。こうしたことに対して当初は一定の評価を与えていた。

にもかかわらず、それに対する実行はほとんど伴わなかった。マスメディアはこうしたことを野党の非協力のせいだと喚き立てているが、私の見る限り、自民党・谷垣執行部や公明党は、かつての社会党や民主党の政権への対決姿勢と対比すれば、きわめて建設的に協力していたと思う。にもかかわらず、実行力が伴わなかったのは、まさに菅首相の国民に訴えかける力の欠如、突破力のなさに他ならないと考えていた。ゆえに東日本大震災がなくとも、菅内閣は総辞職に追い込まれるべきであった。しかしながら、結果として東日本大震災により延命してしまった。そして菅内閣はいよいよ東日本大震災で致命的ともいえる復興政策の遅れを示してしまう。かつて阪神大震災(一部の口さがない方からは「阪神大虐殺」とさえ揶揄)にて、致命的な初動の遅れで批判された村山内閣と比較しても、仮設住宅の建設、生活再建への資金給付、中小企業・農林水産業者への復興支援、補正予算の編成、復興基本法の制定に至るまで日数をかけている。

ちなみに、村山内閣は初めての都市直下型地震としてノウハウもマニュアルも危機管理能力もない中だった。したがって初動の遅れはそうした部分も大きかった。(ただし、現場からの突き上げがなければ出動すら拒否し続けたこと。自衛隊の出動規模を最小限にするよう主張したことは社会党特有のものであり、やはりそれによる人命の損失は村山富一氏など社会党首脳部に帰せられるべきだと思うが)

菅内閣はそうではない。村山内閣という前例・モデルをもとに彼らは何をすべきか、考えることができたのである。なのになぜ法案提出、予算の編成が遅れたのか?主因は、誤った政治主導と菅首相による誤ったリーダーシップによる部分が大きい。

野田氏はこうした菅首相によるパフォーマンスの在り方に対して、閣内にいながら批判的な立場を堅持していた。また今回の4候補と対比すれば、唯一、果敢に「税と社会保障の一体改革」を重要な争点として掲げており、国民の不人気政策に対しても手を付けることを明言している。確かに財務省の言いなりとなって、現時点で復興増税に着手することは極めて愚かなことだと考えるが、中長期的な財政再建への道筋を明確に示すことは日本の財政規律に対する国際的な市場の信頼にもつながる。(ただし財務省の言うような財政再建単体のやり方では国際市場は評価しない。成長戦略・景気刺激を組み合わせた合わせ技が必要である)

円高対策に関しては全く評価しないが、市場マネーの膨張によって、市場介入を否とする近年の欧米財政・金融当局の認識の中で、G8協調の観点から介入に踏み切りにくい環境にあることは理解する。(理解するが、それでも介入により積極的になるべきだったと確信するが)

率直に述べて野田氏は今の状況を考えた中で、bestではないが、民主党が早期解散に踏み切る可能性に乏しいとした場合、betterと述べてもよいと思う。もちろん実現可能性があるbestは早期の解散総選挙で、自民党・みんなの党・公明党・たちあがれ日本を中心とする政権交代が起こることだと確信しているが。

少なくとも半年はこの内閣のやる政策を静観したい。アメリカでいうハネムーン期間みたいなものである。短期間で評価しすぎることは望ましいこととは思わない。野田内閣に対する是非はしっかり政策を評価できる段階になってからでも遅くないだろう。


P.S.私は以前、居直り発言をした菅首相に対して「政権がますます迷走し、日本国民にとって不利益な結果にしかならない」と主張し、「菅首相がいい意味で予想を裏切ってくれること」に期待した。しかし、やはりというべきか、この期待は裏切られてしまった。野田総理にはせめてこの最低限の期待を裏切らない政権運営をしていただきたいものだ。


(執筆者 43)