2012年1月28日土曜日

あえて野田政権を評価する

先ほど、gerira氏より芸術的感性のない人間と名指しされた者である。まあ仕方がない。いつか見返してやるつもりだ。今回、取り上げるテーマもさして芸術的感性のいらないテーマである(笑)。

最近、桜井よしこ氏がTPP推進、野田政権評価を表明して、保守論壇から総スカンをくらっているようだ。ここ最近の一部保守界隈の論調は極めてラディカルであり、異論を許さない風潮が強まってきているように思われる。

野田政権が誕生し、一旦は政権の体たらくに落胆した。しかし、最近の野田政権の動きには目を見張るものがある。まずはそれを実直に評価したいと思う。

①TPPの交渉参加表明
自民党は一貫して自由貿易を擁護してきたが、一方で農協などの利権団体とのしがらみがあって、中途半端な貿易自由化にしか着手できていなかった。もちろん自民党が全く無策だったと指摘するわけではない。民主党のばらまき型の農業補助金ではなく、中山間部や大規模農家への補助金を開始したのはほかでもない自民党だからだ。農政改革はゆっくりとしたものだったが確かに自民政権下でも進展していた。

一方、民主党は今までの関税・価格支持による補助をやめ、補助金行政に切り替えたところはWTO協定の趣旨に沿う筋のいい政策だったのだが、小沢を中心とする勢力によりばらまきによる票田確保の一環とされてしまったところから、政策趣旨が歪んでしまった。

TPPがメリットばかりのバラ色の未来とは言わないが、少なくとも農政・鉱工業・サービス業・知的財産にわたって、これから求められていくであろう見直しを進めるきっかけとなると個人的には期待している。さらに環太平洋諸国との連携は、安全保障上の観点からも対中国戦略として非常に重要である。ASEANと中国の経済的つながりは年々強まっている。一方でASEAN諸国は中国に対して安全保障上の脅威を感じている。だからこそ、日米が協力してASEAN諸国にプレゼンスを提供することは国益に沿うことである。

②武器輸出三原則の緩和
自民党政権でも何度も議論となってきたが、真正面から議論し、緩和に着手したのは安倍政権くらいのものであった。ネット界隈では大人気の麻生氏もこの問題には正面からはタッチしていない。もちろん今まで反対し、足を引っ張ってきた民主党が賛成に回ることで、緩和しやすい環境が形成されていることもあるし、安倍政権が無能だったといいたいわけではない。むしろ今更着手するなら安倍政権が推進したときに賛成しろ、という話である。しかし、党内での合意を得にくいテーマに対して野田氏・前原氏が真摯に取り組んでいる事実を「大したことはない」「特に意味はない」と否定的にみる保守論壇は、一体何をすれば民主党政権を評価するのだろう?

③「マイナンバー」の導入など税と社会保障の一体改革
マイナンバーも一貫して民主党が「プライバシーの保護」を理由に反対していたので、民主党の手柄とするのは抵抗感があるが、野田政権に対する評価として最も高いのは税と社会保障の一体改革を本気で着手しようとしていることである。まあ個人的には大震災後すぐに増税に着手するのはいかがなものかと思うのだが、それでも不人気政策を正面に掲げて、突破を図ろうとしているのは正直でよろしい。

とはいえ、無条件に賛同するわけではない。摩訶不思議な法務大臣人事や国家公安委員長、防衛大臣の不適材不適所人事。民主党に政策通があまりにも少ないからそうせざるを得ないのかも・・・、と同情するが、それでもひどすぎる。

とはいえ、もう半年、1年と成果を待ってあげてもいいのではないかと思える政権に久々に出会えたのではないかと今のところ期待している。

(執筆者 43)