2011年8月20日土曜日

円最高値の報道を受けて

民主党政権の対応が鈍い。これは亡国的といっても差し支えない。75円台の突入により日本は超円高ともいえる状態に突入した。

私は誰が悪いとは言わない。アメリカの国債不安や欧州における金融不安(Pigs諸国の財政危機)によって、相対的に円が買われているという面が否めない。現に安定通貨としてもっともよく知られているスイスフランは連日最高値を更新し続けており、スイス中央銀行による度重なる介入にもかかわらず、それは全く効果を上げていない。


ただし民主党政権下で円高が進んでしまっている原因の1つとして、政権自体の政策理念の問題があげられる。そして、その政策理念は誤っているわけではないのだが、全く検証されることなく、そうした政策が遂行されてしまっていることに危惧を覚える。


民主党寄りの政策ブレーンとして榊原氏が一般によく知られている。榊原氏は日本が今までデフレ寄りで貨幣価値が上昇していたこと、その他の諸国が相対的なインフレにより通貨価値を下落させていたことを考えれば1ドル70円台になっても円は割高とはいえないとする考えを示し、内需主導による景気回復を主張してきた。


実際、民主党がとってきた政策は、円高に対する介入を最小限に抑え、量的緩和にも消極的であった。また子ども手当や直接給付の拡充を通じて、内需拡大を強く主張してきた。結果として成長戦略でも輸出振興よりは医療・介護・保育などの内需拡大を通した景気刺激を強く打ち出すに至っている。(いわゆる菅内閣の「第三の道」)確かにTPPなど輸出産業に対する政策も打ち出しているとは言えなくもないが、そうした政策も民主党における大多数の支持を受けているとはとても言えない。


※量的緩和に消極的という話については、正確に言えば、日銀の専管事項なので金融当局の独立性の観点から一概に民主党政権を非難はできないが、すくなくとも補充の政策委員の任命やその他の場面で、日銀の日銀券残高以上に国債を買付しない原則の緩和と積極的な量的緩和・国際買い付けの拡大を要求することは可能だったはずである。したがって民主党政権の体質として、そうした介入的な政策には消極的といえるのではないだろうか?自民党はさておき、みんなの党は日銀法の改正などで政治介入を可能とすることを主張している。さすがに金融当局の独立性を大きく毀損するのでまずいのでは?とも思うのだが。



結果的に言えば、今回の円最高値更新は、国民の知られぬままに重大な日本経済の構造改革が進められてしまっていることを意味している。すなわちこのまま円高を放置し続ければ、輸出産業の海外流出は避けられず、どちらにせよアメリカ型の金融主導型経済、あるいは内需振興により景気回復を目指していくしかないからである。


民主党はしっかりと日本経済のこれから向かっていくべき路線を主張すべきである。そして輸出主導型・グローバル経済型の自民党・みんなの党と内需中心型の民主党の対立軸をしっかりと示すべきであり、そうした路線を示すことなく、あいまいなまま無策無為に時間を浪費している民主党政権に憤りしか覚えない。


私自身は内需中心型の路線は100%間違っているとは思わないが、少なくとも今までの路線を切り替えるからには相当の痛みを覚悟しなければならない政策だとも思っている。輸出中心・グローバル志向の経済システムが崩れる前に、しっかりと日本国民がこれからの経済の方向性を選び取らなければならない。


※輸出依存度の問題から日本は内需型経済だと主張する意見もあるかもしれないが、サブプライムローン問題に端を発する世界金融危機でイギリスやその他の欧州諸国と比べて、日本・ドイツの経済が経済成長の面で大打撃を受けたように、日本は見かけの輸出依存度以上に影響を受けやすいと考えている。私は経済学部ではないので定量的分析を示すことはできないが、予想として日本経済が少数の輸出中心型産業と、大多数の低競争力な産業に別れ、輸出中心型の産業がもたらす利益にほかの産業が依拠しているためではないかと思われる。欧州の輸出依存度が高いのはすべての産業で相互的に輸出がなされているためで、そういう意味では特定の輸出産業のみではさほどダメージを受けない。日本はそれの逆となる。


(執筆者 43)