2012年2月17日金曜日

橋下新党・船中八策を検証する(2)

①統治機構の見直し

地方分権の推進
多様な大都市制度の創設
首相公選制の実現
道州制の導入
地方交付税の廃止

これらはいずれも近年の地方分権への流れを強く反映したものといえる。


1-1 地方分権

<メリット>

①より市民1人1人に権力が近づくことで、民意が反映されやすくなる
②産業誘致では「大国」で誘致するより「都市国家」できめ細やかな政策を打ち出す方が、うまくいっているという近年の傾向。Ex.)シンガポール、ドバイ、香港
③住民サービスの競争(教育政策・社会保障政策など)

<デメリット>

①地方間の財政格差が深刻化
②ポピュリズム(首相公選制)
③災害時など緊急時は地方分権型より中央集権型の方が即応性は高い
④ナショナルミニマムとしてのサービスが地域によって低下するおそれ

個人的には、国際的な競争の中で、産業政策・誘致、教育政策、インフラ政策などは道州に任せるほうがよりうまくいくのではないかと考える。要は競争原理が働くとサービスが向上する可能性が高い部分は積極的に地方分権を進めていくべきである。

たとえば、産業政策は都市国家の方が小回りが利くためにうまくいく。シンガポールは有望な産業に積極投資することで、産業を育成したし、香港のように自由放任で産業誘致する政策も考えられる。あるいはドバイのようにお金の流れを誘導してあげることで産業育成する政策を取ることも考えられる。これを日本に当てはめれば、北海道はロシアからパイプライン・連絡鉄道を通して、ロシアからの外貨を獲得し、九州は中国・韓国との連携を強化する。関西は金融先物市場の活性化や自由放任政策、大学と連携した有望な産業への積極投資で新産業を創出するといったことである。

また、教育政策は確かにナショナルミニマムの問題を抱えている。しかし人材育成は均一な方針で行うより、様々な方針でバラバラにやる方が、脱工業化社会においてはより良い人材を生む可能性が高い。人材の多様性が生まれ、日本全体で見たときに相乗効果を発揮する可能性が高い。

また、これは個人的な感覚の問題だが、より富ませたり、より水準を引き上げる政策、ポジティブなサービスは市民に最終判断を仰いで悪い結果になることは少ない。しかし弱者を救済する政策や緊急時に備える政策は一般市民に判断を仰ぐと、後回しにされ、ろくな結果にならない。したがって、経済政策・消費者政策・教育政策・農業政策といった分野は地域に任せるほうがきめ細やかなサービスが期待できるが、社会保障や安全保障・外交・災害対策は任せると危険である。

一方、外交・安全保障・社会保障に関しては全体からの分配、共同体の意識が求められる分野のため、単純な競争原理を採用してしまうと、コスト高になる可能性が高い。さらに道を誤る危険性も高い。したがって国がナショナルミニマムとして、担う方が望ましい。

こうした役割分担を維新の会ができるのか、あるいは地域主権型改革という美名に騙されて、暴走するかが維新の会の力量を見る上で重要になるだろう。


1-2 首相公選制


首相公選制に関してだが、イギリスの首相が強大な力を持っているように、本来、大統領制と議院内閣制を比較すると、議会と行政府が一致する議院内閣制の方が政治は安定し、より強力なリーダーシップを発揮できるのは政治学から見て常識である。したがって首相公選制には個人的には反対である。日本の政治風土ならば、常にねじれ現象によって国会が空転しかねない。むしろ小沢流の曲解した形ではなく、イギリス的な党と政府の一体化を図っていく方が、より首相のリーダーシップ強化につながると考える。

(執筆者  43)