2012年2月12日日曜日

吉本隆明と原発

いまさらだが、随分前の週刊誌で吉本隆明が次のように語っていた。人類が積み上げてきた技術を一度の事故で放棄することは、人間が猿から別れて発達し、今日まで行ってきた営みを否定することと同じである。文明の発達とは、失敗しても再挑戦することの繰り返しだ。我々が今すべきは、原発を止めてしまうことではなく、完璧に近いほどの放射線に対する防御策を改めて講じることである。

 左翼の方々はこぞって脱原発を唱えているが、吉本の姿勢こそ、まさに左翼思想の本流をいくものであろう。それは18世紀に隆盛をほこった啓蒙主義そのものである。人間理性と、その象徴たる文明の進歩を信じて疑わない。この思想は古典的な左翼思想だ。現代の左翼思想にはエコロジーが加味されているので、脱原発という主張がうまれるのは無理ないが、左翼思想を徹底すれば吉本のような主張が本来のあるべき姿なのである。したがって、吉本は筋金入りの左翼ともいえる。

 ここまで原理主義的な左翼思想をお持ちの吉本氏には感服させられる。「敵ながらあっぱれ」といったところだ。


(坂木)