2012年9月5日水曜日

反原発派の不都合な真実



 先日、次のような記事を見つけた。タイトルは、「原発の不都合な真実」である。第1回「原発は温暖化対策に役立たない」(http://www.47news.jp/hondana/futsugou/article/1.html)では以下のようなことが書かれている。

温暖化対策のためにも原発は必要だという意見に対して、日本では原発が推進されてきたにもかかわらず、二酸化炭素の排出量は増え続けていると反論する。一方で、「二酸化炭素の排出量に応じて課税する炭素税やエネルギー税の導入、強力な再生可能エネルギー導入支援政策、厳しい省エネの義務づけといったエネルギーの需要と供給、両面からの多彩な政策」をとっているドイツ、デンマーク、スウェーデンなどは、原発の新増設などに頼らずに、温暖化対策を進めているという。原発依存の二酸化炭素排出削減政策によって自然エネルギー拡大が阻害されてきたのだと筆者は主張する。

 なるほど、確かに原発だけが温暖化対策ではない。その他さまざまな方法にも目を向けるべきなのはいうまでもない。しかし、である。筆者は、だから原発に依存するのはやめようと主張したいのだろうが、それは論理の飛躍だろう。原発だけでなく、風力や太陽光といった自然エネルギーを含めて、多様なエネルギー資源を確保することが重要なのである。不安定な再生可能エネルギーに立脚した温暖化対策など本末転倒だ。

 そもそも、日本が原発に依存してきたために、二酸化炭素排出量削減に失敗したという論理的つながりは不明確である。少なくとも、この文章のみからでは読み取れない。「原発の新増設を進めるよりも、規制を強化して省エネを進め、風力や太陽光、バイオマス発電などの自然エネルギーを進め、原発では温排水として単に海に捨てているだけの廃熱を有効利用する方が、はるかに有効な温暖化対策になるのだ」と筆者は断言するが、一体何を根拠にそんなことを言っているのか。この主張は「日本が原発に依存してきたために二酸化炭素排出量削減に失敗した」という命題が証明されない限り、決して成立しない。

さらに、文章中のグラフからもわかるように、原発に依存しきっているフランスの二酸化炭素排出量は他の国に比べて低い。二酸化炭素排出量削減に成功したとされるドイツの約半分である。もちろん経済規模が違うから単純に比較することはできないが、フランスが原発推進政策によって獲得した温暖化対策の成果も検証されてしかるべきであろう。

 もうおわかりかと思うが、この文章は論理的に破綻している。エネルギー政策の素人である私ですら上述したような疑問点が思い浮かぶ。しかしながら、これが反原発派の実態であろう。筆者は別の回で「再生可能エネルギー100%の島」の話を取り上げているが、ここまでくるともはや失笑以外の何ものでもない。論理的思考力に欠けた夢想家。これこそが反原発派の不都合な真実に他ならない。

(坂木)